その行列、まだ並んでるの?
「行列のできるラーメン屋」という言葉を聞いて、どう感じましたか。
人気なのかな?美味しいのかな?ちょっと並んでみよう……。(画像は拾い画なので気にしないでください)
…普通やんけ!
並んでみたは良いものの、いざ入ってみたら普通の味。なんでみんな並んでいるんだ???????
頭の上に?を浮かべながら店を出る。
こういう経験ありますねぇ!
なんでみんな行列並ぶんですかね。最近僕は並びたくないので空いている店に入りますが。
今回はどうして人は並びたくなるのか、ということを調査し、まとめました。
1.サクラの影響力
サクラって聞いたことありますか。
簡単に言えばおとりです。
実際の客ではないけど、客のフリをしてあたかも人気かのようにみせるアレです。
ユーザーから見た通販サイトや飲食店ランキングなどは今まさにこのサクラの問題を抱えています。
ユーザーはサクラによって真の製品やサービスの質を測ることができないからです。
でも、Amazonとかで買い物するときとか、ついついレビュー見ちゃいますよね?
食べログでも点数見ちゃいますよね?
こうした、レビューを見て意思決定するというプロセスは行列によく似た心理が働いています。
サクラがいかに人の意思決定に影響を及ぼすか、実験結果があります。
同調行動を研究している米国の心理学者ソロモン・アッシュ博士は、カードに描かれた直線と同じ長さを持つ線を別の3本の直線から探し出す視覚テストを行なった。その結果、誤答するサクラがいるときの誤答率は37%、サクラがいないときの誤答率は0.7%だった。
要するに、サクラは人の意思決定の材料になりうるということです。(これが良いことかどうかは置いておいて)
したがって、行列も同じように人の意思決定に大きな影響を及ぼします。
人とどうしても同じことをしたくなる。これを心理学では同調行動といいます。
また、私見ですが合理化という心理も働いていると思われます。
行列に並んだ、あんまり美味しくなかった。でも、みんな並んでたしきっと美味しいんだ。自分の味覚がおかしいんだ。
行列に並ぶ時間、払ったお金がもったいない。だから人間は美味しかったと思い込もうとする。
行列に並んだという事実が必要なんです。
また、バンドワゴン効果というものも行列を構成しています。
これはあるブランドやサービスを利用する人が増加するにつれて、社会で流行が醸成され、そのブランドやサービス自体の満足感、安心感などの価値が一緒に増加していくと言ったものです。
行列にあてはめると、サクラ(消費しているように見せかける)がいれば、人は流行であると勘違いをし、行列の先にあるお店もきっと良いものなのだと考えてしまうのです。そうして、並ぶ人が増えると、それを見た人は並んで、その並ぶ人を見た人は並んで……
無限ループですね!
うーん、恐ろしい。
2.行動マーケティング(行列とクネクネ)
この同調行動はマーケティングに取り入れられています。
その名も、行列マーケティング。
まだかまだか、と焦らして焦らして、やっと目当ての物にありつける。
行列をあえて作ることで、並ぶ人の期待感を高めるという戦略です。
人は並ぶことで時間の消費というコストが発生します。
これはサンクコスト(実際にかけたコスト)となり、一定まで行くと人は引くに引けなくなります(ここまで並んだし…という心理)。こうして人はあの行列店に吸い込まれて行く。
この行列マーケティングは非常に手軽にできます。
飲食店であれば、営業時間を短縮する、席を全部使わないor設計段階から少なめにする、並んだ順番を守らせる etc…
全部お金をかけずにできます。今すぐにでもできます。
こうして行列は意図して作られることがあります。
ただ、行列はマイナスに働くこともあります。
これだけ待たされてしょぼかった。
こうなるとマイナスに振れます。
行列が意図せずできてしまった場合、これを回避しなければなりません。
どうするか。
並んでいる最中に「並んでいること」に意識を行かせないようにすることです。
テーマパークでは待機列にさまざまな仕掛けを施して顧客が待つということに意識が行かないようにしています。
「あまり待たずに乗れた」ということもテーマパークでは評価の対象になります。
また、人は行列に並んでいる最中、「歩く」ことでストレスになることを抑えることが出来るとされています。
なので、テーマパークの行列はグニャグニャして距離を伸ばすことで歩かせようとしているんですね。さらに、プライオリティパスなどを発券して、待ち時間の間、園内でお金を落してもらおうという戦略も多くのテーマパークでは導入されています。
よく考えられていますね。流石資本主義の塊。
3.考察
人の心理として他人と同じ行動をしてしまうことはわかりました。
では、なぜこうした心理が形成されるに至ったかを歴史的に考えていきたいと思います。
まず、原始時代では共同生活でみんなで協力して暮らしていました。
いえ、協力しなければ生き残れなかったというほうが正しいでしょう。
また社会を形成するにあたって、秩序を保たねばなりません。そのため、人々が好き勝手に出来ないように同調行動で統制しているのかもしれませんね。
さらに人間は人間に育てられないと、真の意味での人間になることはできません。
世界には多くの動物に育てられた人間の話があります。
しかしながら、伝承等を除いて記録が確認できる限りでは、みな人間としての体を成していないのです。四足で歩行し、鳴き声をだし、衣服は着用しない。有名なところでいえばインドのアマラとカマラの話でしょうか。
人間は人間の中に入っていかない限り、人間たり得ないのです。人間が人間であるためには社会の中に入っていかなければならないのです。
こんなデータもあります。
ロンドン大学の疫学者アンドリュー・ステップトゥーらが、50歳以上の男女6500人からデータを集めて調査を行った。被験者に家族や友人とのつきあいや、市民団体など地元グループへの参加の有無などについての質問事項に記入してもらい、社会的孤立度を調べた。さらに、孤独感についても聞き取りを行い、その後7年間の健康状態を追跡した。
その結果、社会的なつながりがない人は、死亡原因にかかわらず、死亡率が高い傾向にあるということがわかった。社会的に孤立している人は、そうでない人の26%も死ぬ危険が高いのだ。もともとの健康状態、経済状態、性別、年令などほかの要素を合わせてみても、社会的孤立と死の相互関係は同じだった。
社会から孤立することで人は自身の存在意義を見失い、その結果死期が早まるのではないでしょうか。このことからも人間は社会という人間の集合体にインタラクトする存在であることが示されているのではないでしょうか。
いずれにせよ、人は社会なしでは生きてはいけないのです。
したがって、この同調行動は十分に合理化された行動であると言えるでしょう。
4.あとがき
まさか行列をつくることにここまで様々な要素が含まれているとは思いもしませんでした。
ただ、みんな人気だから並んでいる。それくらいのことだと考えていました。
そういう「空気」で動いてしまっているのが我々現代人ということです。
ただ、この「空気」というのは時に恐ろしいものがあります。
時代によっては「空気」のために戦争に突入してしまったことすら人類の歴史の中ではあります。
人は自分の行動に確証が持てなかったり、そもそも自分の意思決定に疑問を感じてしまっていることで、自分の行動を正当化しようとします。
これは、自分の意思決定を他人に委ねてしまっていることに他なりません。自分の人生をアウトソースしてしまっています。
レビューも行列も全て情報に過ぎません。
それらを取捨選択し、自らの思考を用いて意思決定をする。
現代で求められていることの根幹はこういうことかもしれません。
あくまで僕の意見ですが。
実はこの記事、ベンスティラー 主演のLIFE!という映画のステマです。
生きているうちに生まれ変わろう(提案)
あ、これこの映画のキャッチコピーです。(提案)の部分は抜いてください。
僕、大好きなんですよこのキャッチコピー。
以上です。