気づいたら、まとめてた。

ただひたすらに興味のある事柄をまとめるだけの簡単なお仕事です。

スーツを着る、誇りを着る。後編

前回の続きです。

 

 

kawausoman.hatenadiary.jp

 

 

前回は長ズボンの登場とダンディズム、ラウンジスーツの登場までを見てきました。

スーツという基本形はできましたが、20世紀以降は時代ごとに世相を反映したスタイルとなっていきます。今回はそれについて見ていきましょう。

 

 

 

 

ビジネススーツとしての発展

ビジネスウェアとしてスーツは定着しました。しかし時代によってもスーツの形は微妙に違ってきます。今度は1920年から10年ごとにアメリカの例を見ていきましょう。

1920’s(ビジネススーツの原点)

このころのスーツは肩パッドが入っておらず、非常に簡単な作りになっていました。ズボンにセンターの折り目がつけられ始めたのもこのころだと言われています。シルエットもそんなにメリハリがあるようには見えません。

 

またこのころヨーロッパでは1914~1918年に第一次世界大戦が起こっています。

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アメリカは物資を生産、ヨーロッパへ向けて輸送することで儲けていました。戦争特需です。

 

「黄金の20年代」。金融の中心もロンドンからニューヨークのウォール街へと移りました。戦時中だからか、カーキ色のスーツが好んで着られるようになりました。

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1919年に出された禁酒法でギャングのアルカポネが台頭するという暗い側面もあります。ギャングがそこら中でドンパチしていました。お酒の恨みは怖いですね。

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しかし、人々の暮らしは大量生産大量消費に突入し、自家用車やラジオ、洗濯機などが普及し生活は豊かになりました。

このとき、豊かになった庶民の中で投資ブームが始まり、相場は過熱していきました。

 

1930’s(暗い時代とスーツ)

1929年10月24日。

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株式市場は暴落し、ウォール街にあるニューヨークの証券取引所は騒然となりました。

その原因は今でも議論が絶えませんが、チャートを見て言えることは23日に売りが殺到し、それを見て24日には売りが売りを呼び、暴落したということです。

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金融の中心がウォール街に移っていたことでこの不況世界へと広がりました。

 

不況の真っ只中にあった1930年代ですが、この頃近代スーツは完成します。

この頃はスーツのボタンが3つでしたが、一番上のボタンは留めずに着る「段返り」と呼ばれる着方を前提にしたスーツがブルックスブラザーズから出され、流行しました。

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今でも、正統派の流れを継ぐテイラーでスーツを作ると3つボタン段返りです。

こうして優雅さを残したスーツは実用性を求められるようになり、今とさほど変わらない形になっていきました。

また、イングリッシュドレープと呼ばれる形も流行しました。

 

1940’s(生き抜くということ)

1940年代は言うなれば「戦いと犠牲」の時代です。

アメリカ本土自体は戦場にはならなかったものの、世界を巻き込んだ戦いは熾烈を極めました。アメリカでは4人兄弟全員戦死、みたいな話も聞きますね。

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それくらい未来ある若者が泥中、雪中、水中あらゆる場所で戦死するという「犠牲」の時代でもありました。

 

 

では、スーツを見てみましょう。

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辛い戦争を生き抜くためには気をしっかり持って力強く生きねばなりません。肩は厳つく、ズボンもゆったりしたサイジングになっています。戦争で物資不足であろうはずなのに布がふんだんに使用されています。これはなぜでしょうか。

 

 

あくまで推測ですが、これは何が何でも生き抜くという意志の表れではないでしょうか。衣服はその人の個性を表すと同時に、気持ちを表します。僕は精神論が嫌いですが、これは事実です。肩を厳つくし、サイジングをゆったりにすることで大きく自分を見せ、「ここに俺はいるぞ!まだ生きているんだ!」ということを主張しているのではないでしょうか。

 

ただ、物資不足には勝てないので細かな装飾は取り払われたシンプルなスーツがじわじわと広まっていきました。

 

1950’s(栄光、赤狩り、ロックンロール)

戦争からやっと復興できたか、と思ったら今度は冷戦。新しい世界秩序です。アメリカ率いる民主主義の西側とソ連率いる共産主義の東側。そこにははっきりとした分断がありました。

 

アメリカ国内ではマッカーシーとその部下によって共産主義者だけでなく、リベラリストフェミニストなど多くの人が追われる身となりました。いわゆる赤狩り(レッドパージ)です。完全に反動ですね。

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さて、スーツはと言うとこんな感じです。

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普通やん。

 

 

普通でいいんです。親しみやすくてどこか温かい気持ちになるスーツでしょ。

 

このころのアメリカはフィフティーズと呼ばれ、1920年代以来の空前の好景気でした。文化の面ではテレビが一般家庭に普及しラジオを駆逐する寸前まで行きました。家のど真ん中にテレビを置き、一家団欒でくつろぐ。そんなハートウォーミングな生活をアメリカ人はしていたのです。

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音楽ではロックの神様とも称されるエルヴィス・プレスリーé¢é£ç»å映画では大女優マリリン・モンローなど

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現代の文化につながる分野でさまざまなスターが登場していました。

 

1950年代は暗い側面もありますが、国民にとっては最も明るく繁栄し、利益を享受した10年間でした。

 

1960’s(解放と若者)

1960年代は公民権運動、女性解放運動が盛んな時代でした。人種も性別も入り乱れるアメリカで、軽視されてきた自分たちの権利を手に入れるため多くの犠牲を払うことになりました。黒人の公民権運動だけではなく、メキシコ系などのラテンアメリカン、さらにはネイティヴアメリカンなどの権利運動も激しくなりました。

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そんな中、起こったケネディ大統領暗殺事件。

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そこには権力闘争が見え隠れしていました。

 

1955年から続くベトナム戦争

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既存の権力による国のコントロールです。

 

 

 

こうした既存の権力に抵抗しようとする人々の中心にいたのが若者でした。若者はそれまでの文化に対抗し、自らのあり方を定義するようにカウンターカルチャーを展開。

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まあ簡単に言えばヒゲや長髪などの既存の文化ではあり得ないものですね。

左のお兄ちゃん、いい表情してますね。

 

 

音楽でもかの有名なビートルズローリングストーンズなどが活躍しました。

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こうして時代は若者のモノとなっていました。それを象徴するかのように1960年代のスーツはスリムになっています。

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スリムなスーツで若々しさを表現していますね。とてもかっこいい。

 

 

さらにこの頃ピーコック革命と呼ばれるものが起き、シャツといえば白というようなものではなく、シャツと言ってもさまざまなバリエーションが見られるようになりました。もっと色を取り入れようという流れですね。

 

また、このころにはスーツが大量生産体制に入っており、アメリカのビジネスマン含む労働者は消費文明に突入していたとも言われています。 

 

1970’s(ヒッピーとスーツ)

1970年代に起こった特筆すべきものはデタント(緊張緩和)です。当時の冷戦構造において、米ソともに際限のない軍拡を続けていました。アメリカが核弾頭一個作ったらソ連が二個作る。ソ連が三個目をつくればアメリカが4個目を作り始めている。そんな具合で、軍事費がどんどん膨れあがり両国の経済に多大な影響を及ぼしていました。

もうやめとこうか。そんな感じで終わりを迎えようとしていましたが、結局は中東やアフリカなどの紛争勃発によって頓挫しました。なにやってんの。

 

あとはウォーターゲート事件も有名ですね。ニクソンウォーターゲートオフィスビルに盗聴器をしかけさせたってやつです。

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いやー黒いですね。

 

さて文化はこのころにカウンターカルチャーが最盛期を迎えます。

ヒッピーって知ってますか。

酒飲み、マリファナを吸い「Love and Peace!」とか言ってるアレです。

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胡散臭いですね。1960年代に引き続き、彼らは既成の価値観を否定し、文明以前の自然で原始的な生活への回帰を主張した人々です。彼らのおかげでファッションには大きな転換が起こりました。

 

 

その波はスーツにもやってきます。

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……次行きましょうか。

 

1980’s〜(デザイナーズスーツの時代)

 1980年代の大統領で有名なのはレーガン大統領ですよね。

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レーガン大統領は停滞した経済を活性化すべく、様々な方策を打ち出しました(レーガノミクス)。

このころには冷戦終結にむけて本腰を入れ始め、ソ連の指導者であったフルシチョフと何度も対談を行い、世界は冷戦終結に向けて動き始めます。

 

経済面に関してはどん底もいいところでした。それまでの軍拡で大きな赤字を出したことで社会福祉のための予算は削られ(財政赤字)、安価な日本製品流入貿易赤字)。これら二つを双子の赤字と呼びます。

さらに1987年にはブラックマンデーも起きたので踏んだり蹴ったり。ããã©ãã¯ãã³ãã¼ãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

 

なんだかんだ明るい時代に見える1980年代でしたが、実際には最も勢いをなくしていたと言えるでしょう。しかし、文化はそれを吹き飛ばす空元気のようなところがありました。マッチョイズムですね。

 

1980年代といえばハリウッドです。様々な名作映画が生まれました。

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TOPGUNは今見ても面白いです。ストーリーも王道少年漫画みたいなところがあるのでぜひどうぞ。トム・クルーズって小s…かっこいいですね!

 

他にもBack To The Futureなんかもありますね。1.21ジゴワット!!!!

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もう少し早く生まれたかった。

 

 

スーツで特筆すべき点はイタリアと日本のデザイナーズスーツの流入です。

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日本だとヨウジヤマモトやコムデギャルソンなどでしょうか。

うーん派手。

多様化ですね!

 

 

イタリアではアルマーニ、フェレ、ヴェルサーチなど3G の時代です。これらが注目されるようになったのはイタリアのサルトリア文化と呼ばれる職人の手で作られた着心地と素材を追求する文化ですね。おそらく、大量生産時代の反動で、よりよいものを長く着る、という流れになったのでしょう。

 

 

 

 

あとがき

 

疲れました。

 

アメリカ近現代史と絡めて書いたら死にました。

 

今度はもっとコンパクトに行こうと思います。

 

ここまで読んでいただきありがとうございました。

 

次回こそは短くまとめます。

 

ここらへんが気になる人はぜひ映画を見てください。マフィア映画からずーっとファッションを見ているだけでも面白いですよ。

 

以上です。