カルロス・ゴーンが伝えたかったこと。
9/17日、弊学に
カルロス・ゴーンが来ました 。
たまにこういう「やばい(誉め言葉)ゲスト」を呼ぶから油断ならない。
カルロス・ゴーンといえば倒産の危機にあった日産自動車のV字回復を成し遂げた稀代の経営者として有名ですよね。今は三菱自動車で元気にしているそうです。
自動車業界に興味は特にありませんが、「リーダーシップを語る」ということだったので聞きに行きました。
リーダーシップって就活始めるとめちゃくちゃ聞きますよね。
なぜこうもリーダーシップが求められる時代なのか。カルロス・ゴーンの論を展開しつつ考察したいと思います。
1.ダイバーシティ(多様性)とリーダーシップ
突然ですが、あなたの友達はあなたと考え方や性格、発言などがよく似ている、ということはありませんか?
人間というものは同じような人と群れるのが好きな生き物です。(動物なら大体そうか。)
では、なぜ同じような人と群れるのか?
答えは単純、楽だし安心できるから。
人間を含む動物は自分と違う存在がいると弱点を探しはじめ、攻撃することで自分のテリトリーを守り安心しようとします。
基本的に人間にとってダイバーシティは相容ることのできない概念なんです。
最近の傾向を見ると、グローバル化と共にダイバーシティも加速度的に進んでいます。
これらのことからダイバーシティの先にあるのは「混乱」である、とゴーン氏は述べています。
ではなぜ、いまダイバーシティがこれほど叫ばれているのでしょうか。
ゴーン氏に言わせてみれば、ダイバーシティというのはイノベーションの源。
しかし、組織だって行動しなければこのイノベーションは成しえません。
人間と動物との違いは「ダイバーシティを超えて共に協調できるか」にあります。
動物は種が違えば協同は大変難しくなります。しかし、人間は性別、国籍や人種など様々な障壁があれど一つにまとまることができます。これが人間の最大にして最強の武器です。
このバラバラにむいたエネルギー(ダイバーシティ)を同一のベクトルに向けること(マネジメントすること)ができれば、ダイバーシティにおける弱みを人間は克服できるということです。
ではダイバーシティをマネジメントするには何が大切なのか。
それは、「繰り返し説明すること」です。
一回きりのスピーチで「はい、わかりました。」と従業員が従ってくれるならば経営者にとってこれほど楽なことはありません。そんな会社はもはやダイバーシティのかけらもありません。
多様な意見が出るでしょう。賛成派もいれば反対派もいる。
ここで重要なのは「なぜダイバーシティが大切か」ということをロジックを組み立て事実を示しながら納得させることです。
もしこのロジックがなければ、上層部の押し付けだと思われたり、次の日には心変わりされてしまいます。
納得させること、これが何よりも大切なことなのです。
会社の長期的な目標は、利益を上げ続けること。
このダイバーシティを促進するとどんな利益が会社にもたらされるのかを従業員には信念と忍耐をもって説明し続ける必要があるとゴーン氏は結論付けました。
優れたビジョンを描き、それを伝え続ける努力が大事です。
2.そもそもリーダーシップとは何か
じゃあビジネスにおけるリーダーシップってなんなのよ。
ゴーン氏は簡潔に「成果を出すこと」と定義しました。
リーダーは政治やビジネス、スポーツなどなんでも「現状をより良くするため」に選ばれます。
現状をより良くするためには成果を上げなければなりません。
したがって、リーダーシップとは成果を上げること、というロジックです。
ゴーン氏にとってまず成果を上げなければリーダーとは言えません。
また、この成果も短期的なものではいけません。
会社の目標、前提とは「成果を上げ続けること」です。
将来への備えも万全にしたうえで長期的に成果を上げ続けなければこの目標は達成できません。
リーダーは常に組織に対していかに力強く貢献するかを考えねばなりません。
では、どうすればチームを率いて成果を挙げることができるようになるでしょうか。
ゴーン氏は2つの力が重要であると述べています。
一つは「人とつながる力」です。
組織は個人の集まりによって成り立っています。
この個人をどうすれば引き付け、モチベートできるかということが非常に大切であるとしています。
さらに人は学びたい、納得したいという欲求があります。
リーダーはこの欲求を満たすため、先に述べた通りビジョンを示しつつ何度も何度も言い聞かせる力が必要であるとゴーン氏はしています。
この2つの力があればあなたも立派にリーダーとしてチームを導くことができるでしょう。
3.ゴーン氏が見る、日本人の特徴
ゴーン氏は次に日本人の特徴についても言及していました。
日本人の最大の強みとは「整理し規律する力」と述べています。
これはわかる。集団行動とか得意だもんね、うんうん。
日本を代表する企業、トヨタでは4S というものがあります。
整理、整頓、清掃、清潔の頭文字の子音を合わせて4Sといった具合です。
東南アジアの工場を日本人が買収すると瞬く間に整備され、きれいになり生産性が著しく向上した、なんてエピソードもあります。
また、組織に対して献身的に貢献できることも日本人の強みである、と述べました。
ゴーン氏はフランス人ですが、日本人以上に日本人という人間をよく理解している方だと僕は思います。
物事全てがそうであるように、この最大の強みも弱みと表裏一体です。
では日本人にとって最大の弱みとは何でしょうか?
それは変化を嫌うことです。
今の時代はテクノロジーが急速に進歩し、どんな産業にも変化の波が押し寄せています。それまでは上手く回っていたビジネスモデルをこれから先も同じように続ける、ということは不可能に近いでしょう(銀行などが好例ですね)。
今までの日本は東、東南アジアにおけるパワーハウス、つまり原動力としてその役割を果たしてきました。しかし、昨今のASEANの伸びや中韓の台頭など、状況は目まぐるしく変化しています。
ゴーン氏は「変化の裏にチャンスあり」と説いています。
このような外部環境の変化をいかにピンチではなく、チャンスとして捉えることができるかが今後の日本の分かれ道ではないでしょうか。
4.自動運転ってどうなの?
①なぜ自動車産業は伸びるのか
これから伸びるとされている業界の中で最も注目すべきはモビリティ、つまり自動車産業であるとゴーン氏は強調しています。
人類は鉄道、自動車、飛行機などモビリティ(移動手段)を追求してきました。
しかしながら、国によっては鉄道などがまだまだ発達せず不便な生活をしている人がたくさんいます。
通勤通学に山や平原を越えなければならないため行けない、といった話を聞いたことがある人もいるでしょう。
もし仮に、彼らが車を持つことができればどうでしょうか。
仕事を探しに行けるし、学校だって楽に行くことができます。
モビリティは最低限度の生活を保障する存在なのです。
また、世界人口73億人のうち、45億人(61%)ほどは8ドル未満/1日で生活しています。月にすれば250ドル、日本円にして2万5千円程度です。
そのような人たちにとって車は夢のまた夢。しかし、先に述べたようにモビリティは今や最低限度の生活に必要になっています。
もっと安価に、もっと安全にすることが自動車業界に課せられたミッションであるといえるでしょう。
②自動運転ってどうなのよ
昨今は自動運転が話題を呼んでいます。
しかし、まだまだ発展途上な技術であるため死亡事故を含む事故のニュースが絶えません。
これから本当に自動運転技術は普及するのでしょうか。
現在、交通事故による死者数は140万人ほどです。ここで重要なのはその死亡事故の90%はヒューマンエラーということです。これを一気に解決できるのが自動運転の魅力なのです。
現状、事故が起きているのはまだまだ自動運転技術はプロトタイプに過ぎないからだとゴーン氏は続けます。しかしながら単一車道における活用実験や、事故時の法的処遇など様々な面で官民一体となって進めているのだとか。
印象的な言葉として、現在の運転技術では「人間が運転の奴隷になっている」というものがありました。
運転をしている間はよそ見をすることも、ハンドルから手を離すこともできません。
しかし自動運転技術によって人間はそれらから解放されるのだ、とゴーン氏は力強く言いました。
宣伝しなくてもみんな大好きになるよ、とも。
市場は拡大し続ける上に、最新技術が詰め込まれるという夢のような業界ですね。ロマンの塊かよ。
5.最後に
ゴーン氏は講演中に「人とつながること」「人を納得させること」の重要性を特に強調していました。
これからの時代、ますますバックグラウンドの全く異なる人たちで構成された組織に若者はとびこんでいくことになるでしょう。
そんな中でこれらの力があればその組織をまとめあげ、より大きな成果を挙げることができます。そういった意味では、これら2つの力は普遍的な力であると言えます。
「成果を挙げられなければリーダーとは呼べない」という言葉はゴーン氏の生き抜いてきた、まさに生き馬の目を抜くようなスピード感であるビジネスを如実に表現した一文であると思います。
また、成果で人は判断するというところに経営の面白さであったり、厳しさを見出すことができるのではないかとも考えます。
ゴーン氏の言うリーダーとはビジョンを掲げ人々を率いるビジョナリーリーダーそのものです。彼はビジョンについて書籍でこうも述べています。
「ビジョンは退屈ではいけない。船を建造するとは、人を集め、木材を用意し、人に個々の作業を割り当てることではなく、大海原を目指すという目的を与えることである。」
リーダーシップ論については今後理論と実践をまとめた記事を書くつもりなので、そちらで詳しく説明できればと思っています。
以上です。