ビジネスアカウントを思いっきり擁護してみた
「ビジネス初心者が数か月で何万円稼いだ!」
「お金はいりません、あなたの人生のお手伝い!」
「雇われから自由になりました!」
「今日は教え子と焼き肉(どこか高そうな焼き肉の画像)」
こんな「誰でも簡単に稼げる仕組み教えます」みたいなアカウントにフォローされることはありませんか。
あるよね、もちろん。
何回も同じ名前、同じ内容でフォローしてくる、ちょっとイラッとする人たちです。
本当か?と思いつつツイートを覗くと上の赤文字みたいな文章がずらずら並んでいる。
突っ込みどころ満載です。まさにボケのデパート。
やる気あんのか!とこちらから言いたくなるほど、みんな同じ内容なんです。そのくせに何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回もしつこくフォローしてくるアレです。
イライラしますよね。もはや気にしないという方は悟りを開いています。今すぐ宗教の開祖になりましょう。
しかし、彼らは頑張っているんです。みんなが、話をまともに聞いてあげないだけでもしかしたらいい人たちかもしれないんです。
みんながあまりにも彼らを叩くので可哀想に思いました(小学生並みの感想)。
今回は彼らの涙ぐましい努力を、僕の持っている知識を総動員して擁護してみようと思います。
1.ドッペルゲンガー?知名度戦略の裏側。
プロフィール画像同じやんけ!!!!
そうです、彼らです。彼らの目的はできるだけ自分の話に食いついてくるやつを増やすことです。そのためには、同じbio(biographyの略。つまりは自己紹介文)でもプロフィール画像でも躊躇しません。アクセスのための入口を増やそうとしているのです。みんなにこのビジネスを知ってほしい、みんなに稼いでもらいたい。社会全体を幸せなものにしようという考えのもと、行っているのかもしれません。
僕は凡人なので理解できませんが、彼らは非常に崇高な理念を持っています。
これは彼らの涙ぐましい努力の一つです。できるだけ、人の目に留まって興味を持ってもらう。知名度の向上は商売の基本です。いくら製品が良くても、知ってもらわねば買ってもらうことはできません。売り上げの前に知名度が来ているのです。
彼らはそれをインターネットというテクノロジーを駆使して、ただ必死にやっているだけなんです。毎日フォローリクエストを送り、フォローを許可してくれる人に見てもらう。フォローしてもらわなくても拒否段階で一度は目に留まる。内容よりはまず、知ってもらうことが大事なんです。
「基本を実践することが一番難しい。」物事に精通した偉人はこういうことをよく言っています。基本を徹底して地道にできる彼らはまさに人間の鑑です。
素晴らしいですね。
2.超合法。自己開示と信頼。
え、合法に程度なんてあるの?と思った方。流石です。
そんなものはありません。
合法に超合法も微妙に合法もありません。あるのはシロかクロか。そのどちらかです。
では彼らは、なぜこれほどまでに合法を強調するのでしょうか。
人間は知らないことに対して恐怖を感じます。これは生物の歴史から考えるとごく当たり前のことです。知らないものに突っ込むと最悪死にますからね。
書店に行って見てみてください。営業のビジネススキルとして雑談力は非常に重視されています。あれこれ自己開示をして自分を知ってもらう。まずは自分を信用してもらう。すると、不思議に「あれ…この人もしかしていい人?この商品も、信頼していいかな?」となります。商売は突き詰めると人間関係です。人間関係の根幹は信頼です。これ超大事。
ここで彼らは私達の不安を取り除こうとしています。安心して、ビジネスに参加してほしい。そんな彼らの思いが込められているのです。もちろん、上で解説したように心理的にもとても有効な手段です。
3.なぜ大学生ばかりが起業するのか
彼らのプロフィールには必ずと言っていいほど「~(地名、基本的に都道府県)の学生」と入っています。制服などの写真はないため、おそらくではありますが中高生ではないでしょう。中高生はビジネスするより今、勉強したほうが将来稼げます。
制服を卒業した年代、かつお金がない年代です。
そうです、彼らは大学生です。
彼らはまだ社会に出ていません。言うなれば半人前です。そんな彼らでも独自のメソッドがあれば、たとえ大学生という稼ぐ、といえばアルバイトが真っ先に出てくるようなそんな学生に対して彼らは啓蒙しようとしているのです。
ビジネス経験があると就活に有利。そんなことも彼らは熟知している。おそらく、就職したくなくて必死に就職以外の道を探したのでしょう。一度は就職について調べているので有利になる経験なども心得ている。
彼らは社会の歯車から我々を救い出そうとしているのです。
まさに資本主義からの脱却。共産主義の悲願ですね。
彼らこそが現代社会の救世主です。
僕は資本主義の犬です。
4.終わらない限定期間
よく「10人限定です。残り枠はあと1人。お急ぎください!」なることをツイッターのbioに書いています。
なんて優しいんだ!
私たちにもまだチャンスはある。
神(彼ら)は私たちを見放してはいないことを神自らが教えてくれているのです。まさに、地獄に垂らされた蜘蛛の糸。芥川龍之介の短編では罪人がいっぱいしがみ付いた結果、ぷつんと切れてしまいますがこれはそんなことありません。10人掴んでも大丈夫です。
実はこれ、マネジメントについて重要な示唆を与えています。
かの有名なAmazon.comのCEO、ジェフ・ベゾス氏は「最適なチーム規模はピザ2枚(アメリカンサイズ)で足りる人数である」と述べています。ピザ1枚で3、4人とするとピザ2枚で6〜8人と言ったところでしょうか。
また、かつて世界を蹂躙し日本にまで迫った世界史最強の軍隊とまで言われるモンゴル帝国では軍隊の最小単位は10人であるとし、この10人の塊をたくさん作ることで1万人もの軍隊を統率しました。
この「管理者1人あたり何人ほど管理できるか?」ということは長らく議論されてきました。これは経営学ではSpan of Controlと呼ばれています。この人数は営業などの一つの領域に特化したシングルタスクなら増えます。逆に多岐にわたる業務であれば逆にこの人数は減ります。
ビジネスを運営する彼らはこのことを心得ています。できるだけ少人数のほうが目の行き届いた教育を施すことができます。彼らは教師でもあり、同時に経営者でもあるのです。
5.新手の鍵付きアカウントとカリギュラ効果
最近増えてきましたね。鍵をつけて一見ビジネスアカウントとは見えないようにする工夫。彼らは気づいたんでしょう。
「人間、隠されたものほど見たくなる」ということに。
これは心理学ではカリギュラ効果と言います。
「禁止されるほどやってみたくなる」そんな心理状態のことを指します。
押すなよ!押すなよ!
…押しますよね。そりゃ押してくださいっていうフリですから。
例えを変えましょう。
鶴の恩返しである晩訪ねてきた女性におじいさんとおばあさんは「絶対に見ないでください」と念を押されます。しかし、開けたいという誘惑に負けてしまい、開けたところ助けた鶴であったことが判明し、正体を見られた鶴は飛び去ってしまいます。
このように人間は「してはいけないことをしたくなる」ものです。彼らはそれを見事に活用しているわけです。
彼氏持ちのみなさん、彼氏に「浮気をしていいよ」と言ってみてください。この効果どおりならば彼氏は浮気に対する興味を失い、浮気をすることはないでしょう。たとえこれで浮気されても責任取れませんが。でも、どこかで見張られてる感あってできないのが人間の心理だとも僕は思います。
学んで蓄積し、進化する。これが人間と他の動物との相違点です。まさに人類の鑑(2回目)
あとがき
以上、僕の持っている知識を総動員して彼らを分析し擁護してみました。
死ぬほどくだらないと思っていることからも学ぶことは多いです。
世の中、学びに溢れていますね。
あ、僕はビジネスアカウントのこと死ぬほど嫌いです。
真面目にビジネスしてる学生に土下座して謝ってください。
金を稼ぐ以上、どこかでリスクは背負うものです。ノーリスクハイリターンなんて有り得ません。
以上です。